雨乞岳   Mt. Amagoidake

概要
 鈴鹿南西部、県境主稜線・御在所岳から西に延び、綿向山まで向かう長大な稜線上にある、鈴鹿第二の高峰です。標高は1238m。標高一位の御池岳1247mからしても、ほとんど引けをとりません。その姿はのびやかで優美といったところでしょう。北や南から望むと、東雨乞岳とともに双耳峰となります。でも、同じ鈴鹿の双耳峰・仙ヶ岳のようにゴツゴツとせず、やわらかいイメージが漂います。鈴鹿山脈のほぼ真ん中で、この標高を誇る峰ですから、その姿は鈴鹿最北部の霊仙山から、最南部の那須ヶ原山からまで、ほとんどの鈴鹿の山から見ることができます。また、滋賀の最高峰・伊吹山、琵琶湖をはさんだ比良山系・武奈ヶ岳や南方の布引山系・経が峰などからも認められます。それでも、鈴鹿の山の中での認知度はNo.2とは行かず、御在所岳や鎌ヶ岳、藤原岳や霊仙山、すぐ西の綿向山などと比べると、そんなに多くの人が登るというほどではありません。だいたい会うのは数グループ程度。日によっては、一人、二人・・・。そんな、静かな山旅を楽しめる山でもあります。
 雨乞岳は東西の長大な尾根の真ん中にあるだけではなく、北に向かう大きな二本の尾根の起点にもなっています。まず一本目は、北側の杉峠の頭から一度北東に振って、イブネ、さらに北へ大峠ノ頭(深谷山)を経て銚子ヶ口、そして黒尾山を経て永源寺ダムに沈む長大な尾根。もう一本は、杉峠の頭から北西方向に延び、タイジョウを経て水谷岳(カクレグラ)、さらには入道ヶ原に達する長大な尾根です。どちらも、鈴鹿の良さを実感できる、静かで美しく、素晴らしい尾根です。

ルートについて
 ルートとしてまず挙げられるのが、鈴鹿スカイラインの武平峠のトンネル西口から、御在所-雨乞の稜線を越える沢谷乗越を経て、一度愛知川源流部に下り、クラ谷をさかのぼって東雨乞岳に達するルートでしょう。このHPでも、最初に(2011.9.24)紹介しています。
 同じく武平トンネル西側からのルートとして、沢谷乗越から郡界尾根(いまは東近江市と甲賀市の境界ですが、長らく神崎郡と甲賀郡の境界でした。)に入り、沢谷ノ頭、三人山を経て東雨乞岳に達するルートが、YAMAPでも赤い実線になり、多くの人が使うようになりました。下の2023.11.12は、このルートで登っています。
 雨乞岳の北側には蓮如上人や信長襲撃で有名な「千種(千草)越え」の街道があり、その最高点・杉峠が雨乞岳とイブネをむすぶ稜線を越えています。この杉峠を経て登るルートも人気のルートです。起点は、近江側の甲津畑、あるいは伊勢側の朝明、あるいは最初に紹介しました武平峠のトンネル西口からコクイ谷を経ても可能となります。
 雨乞岳の西に清水頭を経て綿向山との間に位置する大峠を経るルートもあり、これも起点としては、近江側の甲津畑、野洲川ダム、さらには長くなりますが綿向山も考えられます。甲津畑方面から一つ前の杉峠を経るルートで登り、下山に本ルートを用いた山行を下(2004.7.19)で紹介いたします。
 さらに、その清水頭に、南の野洲川ダム方面の白倉谷林道から直接登る、清水頭・南西尾根ルートもあり、下(2013.10.6)で紹介しています。さらには、南面の稲ヶ谷から雨乞岳と東雨乞岳の間に詰めあがるルート、南の鈴鹿スカイライン方面から延びる長い尾根を登るルート(以上管理人未踏)などもありますが、稲ヶ谷ルートは現在、転落などの遭難が多いため、熟練者以外は入らないように注意を促す看板が立てられています。


山行写真記
三人山の尾根から雨乞岳周回、2023.11.12へ
秋の雨乞岳・武平トンネル西口〜沢谷乗越〜クラ谷〜七人山のコル〜東雨乞岳(往復)、2011.9.24へ
夏の雨乞岳・甲津畑〜フジキリ谷〜杉峠〜雨乞岳〜清水頭〜大峠〜甲津畑、2004.7.19へ
秋の雨乞岳・深山橋〜白倉谷林道〜清水頭・南西尾根〜清水頭〜南雨乞岳〜雨乞岳〜東雨乞岳〜武平峠〜深山橋、2013.10.6へ


雨乞岳のすぐ北のイブネ
クラジャン越えてクラシ・イブネへ、2023.4.23へ
秋のイブネ、クラシ、チョウシ・甲津畑〜フジキリ谷〜杉峠〜イブネ〜チョウシ〜クラシ〜杉峠〜甲津畑、2009.10.11へ

雨乞岳の山姿
周囲からの雨乞岳へ

雨乞岳からの眺望
東雨乞岳・山頂からの眺望、2011.9.24へ



雨乞岳MAP


この地図は国土地理院発行の2万5千分の1地形図(御在所山)をベースに作成いたしました。


周囲からの雨乞岳滋賀の山・山姿写真集より抜粋:詳細はこちらをご覧ください。)


御在所岳より



鎌尾根より



竜王山〜綿向山縦走路より



綿向山より



草津市より。真冬の雨乞岳(左側奥) その右は綿向山



比良山、金糞峠より。中央奥が雨乞岳



静ヶ岳より






東雨乞岳・山頂からの眺望

撮影日:2011/9/24

東雨乞岳・山頂からの山写です。ここは360°の素晴らしい展望台です。まずは360°パノラマ、続いてほぼ北から順に鈴鹿そして伊吹や比良などの名峰の数々です。


東雨乞岳からの360°パノラマへ



杉峠の頭・1121m
雨乞岳のほぼ真北に杉峠があり、そこから北への盛り上がりが、杉峠の頭です。山頂部にはブナの木がいっぱいあります。後方には日本コバ。



大峠ノ頭・1087m
その右に見えてくる峰は、大峠ノ頭。別名、深谷山です。左後方は黒尾山。右後方は銚子ヶ口。手前に佐目峠。



銚子ヶ口・1077m
後の薄く見えている山を除いて、後方で横に広がるのが銚子ヶ口です。はげ山になっているのが南峰。右に三角点峰。その手前はイブネの一峰・チョウシ。ややこしいですが・・・。



霊仙山・1094m
上の写真のチョウシと、銚子ヶ口の後方の薄く見えているところを望遠で。中央の奥が、鈴鹿のほぼ最北端に位置する霊仙山です。一列手前は
左から、滝谷山(鉄塔が林立)、サンヤリ、茶野(白い岩肌)など。左最遠は、滋賀県第二の高峰、伊吹山地の金糞岳1317m。




伊吹山・1377m
霊仙山の右後方には滋賀の最高峰・伊吹山。その右手前には丸い鈴ヶ岳。さらに左手前には富士山型の天狗堂988mも、秀麗な姿を見せてくれています。



イブネ・1160m
視界をぐっと引くと、巨大なイブネが横たわっています。もし、山頂部がこんなに平たくなかったら、雨乞岳より高い山だった
かもしれませんね。もちろん巨大さは昔のままですが、山頂部の笹はほとんど枯れて、苔に覆われた状態。後方に御池岳が。




御池岳・1247m
鈴鹿第二の高峰から鈴鹿の最高峰・御池岳を望みます。御池の左に少し離れて鈴ヶ岳。



藤原岳・1171m
御池岳の右には藤原岳の峰々。鉄塔が乗るのが冷川谷の頭、その右が最高峰の天狗岩1171m、
右端に藤原展望丘。手前のまだら日陰になっているのが、静ヶ岳。一番手前はイブネの一角、クラシ。




竜ヶ岳・1100m
藤原展望丘の右には、竜ヶ岳が見えてきます。ほぼ北西方向です。



釈迦ヶ岳・1092m
続いて、視界を右に振ると、釈迦ヶ岳の姿。「大蔭のガレ」が白く光っています。手前の日陰の山は水晶岳。釈迦ヶ岳の後方には養老山地の山々。



根の平峠
その右は、高い山がなく、一番低くなった根の平峠で、その先は、伊勢の国、朝明です。
この峠を千種街道が越えていきます。手前には神崎川上流部の広大な森が広がっています。




名古屋駅周辺
その隙間から少し上を見ると、名古屋都心が見えています。名駅のツインタワーです。



国見岳・1170m
次に右に視界を振ると、大きな盛り上がりが。国見岳です。大きな岩が点在しているのが良くわかります。左側に青岳。



御在所岳・1212m
真東です。御在所岳です。こちら(東雨乞岳)は1225mですから、わずかに見下ろしているので、山頂の後に白い気象ドーム(御在所レーダ雨量計)が山頂より少し高く見えています。



鎌ヶ岳・1161m
鎌ヶ岳とその右に鎌尾根。やはり、ここからの鎌は最高です。



仙ヶ岳・961m
南部の名峰、仙ヶ岳。右が最高点の東峰。左が西峰。その間で、獅子岩が吼えています。左手前の鋭鋒は高円山945m。



御所平・850m
ほぼ、真南向き。一番手前は横谷山(左寄り)と、サクラグチへと続く尾根 次の列では、左端に仙ヶ岳西峰。
その右が御所平。山頂部は名前のとおり、ほぼ平坦です。最後方は伊賀・布引山地の経が峰819mです。



ベンケイ762m、四方草山667m、仏ヶ平565m
上の写真の右端あたりを望遠で覗くと、こんな三つの山がほぼ一直線上に。手前からベンケイ、四方草山、仏ヶ平です。



鈴鹿最南部
その右手には、鈴鹿山脈最南部の山々が。写真のほぼど真ん中、こぶが多くあるのは高畑山773m、その右が台形の那須ヶ原山800m。その右に
下がりながら小さい突起が二つあるのが三国岳715mでしょう。那須ヶ原山の後方には、伊賀の霊山。なお、一番手前・左寄りはサクラグチ919mです。



雨乞岳・1238m
真西には、雨乞岳の本峰。笹のじゅうたんがきれいです。



近江盆地、琵琶湖、比良山系
北西方向です。近江盆地が広がっています。その中に、箕作山、繖山〜猪子山、八幡山〜奥島山が左右に広がっています。そしてその向こうが琵琶湖。
さらに琵琶湖の対岸には比良の山々。右手前は、入道ヶ原789m(平野寄り)。さらに手前の登山道が付いた尾根は、杉峠から雨乞岳への登路となる雨乞岳・北尾根。



蓬莱山・1174m
比良の左端には蓬莱山。右下は八幡山と近江八幡の旧市街。



武奈ヶ岳・1214m
さらに右には比良の盟主・武奈ヶ岳。琵琶湖手前の奥島山とさらに手前の箕作山の間に、西ノ湖の湖面が少しだけ見えています。



水谷岳(カクレグラ)・990m、タイジョウ・1060m
もう少し右に振ると、再び鈴鹿の山々が現れます。手前の丸い峰がタイジョウ。その向こうが水谷岳(カクレグラ)です。さらに向こうの鉄塔が乗っているのは、白鹿背山755m。



日本コバ・934m
ちょうど一周してきました。再び、真北です。日本コバの平たい山姿。手前は、一番上で紹介した杉峠の頭です。


以上、撮影機材:ボディー:Pentax K-7、レンズ:SMC Pentax DA18-250mm F3.5