安楽越から霧ヶ岳、四方草山へ   Mt.Kirigatake & Shioso from Anraku-goe

 鈴鹿南部を横切る峠道・安楽越は、甲賀市土山町の山女原(あけびはら)から三重県亀山市の石水渓に抜ける峠道です。かつて秀吉も大軍を率いて越えたといわれています。現在このルートの真下を新名神が鈴鹿トンネルで通っています。この峠と鈴鹿峠の間の鈴鹿山脈は、少し地味な山々、つまり、相場振山、錐山、霧ヶ岳、四方草山が並び、鈴鹿峠近くには他よりはちょっとだけ有名な三子山があります。この峠間には今回歩いたルート以外には滋賀県方面へはしっかりした抜け道はなく、一度入ってしまうと、途中でなかなかエスケープできない山域です。標高はせいぜい660m程度までですが、登り下りが多く、なかなか手強い山域です。今回は山女原をベースにまず安楽越の峠に達し、そこから縦走路を相場振山、錐山、霧ヶ岳、四方草山、三子山と越え、その先の東海自然歩道で山女原に戻るというルートで周回してみました。写真タイトル横の番号は、最後のルートマップに対応しています。

錐山・山頂からの眺望へ
ルートマップへ

山行写真
撮影日:2012/6/3 Photo by Minaphm, All Rights Reserved.
撮影機材:ボディー: Pentax K-7、レンズ: SMC Pentax DA18-250mm F3.5




山女原の入口にて @
この少し手前に駐車して、歩きはじめました。標高347mの橋を渡り、ここは左の安楽越方面をとります。



その先の峠道 A
Aの先で山に入ります。その手前の峠道です。東海自然歩道の一部でもあるこの道は、車でも越えられる道ですが、せまいところも多く、めったに車は来ませんでした。



ガクウツギとタニウツギ A-B間
梅雨入り直前の低山では、このような花が盛りを迎えていました。



安楽峠 B
標高約490mの安楽越の峠です。右に上がっていくのは今日行く方向とは逆の、かもしか高原、臼杵ヶ岳方面です。



縦走路の入口 B
そしてこちらが、今から向かう方面への入口です。峠の切通しの手前(右)側です。



いきなりの急登 B-C間
入るとすぐ先に分岐があり、右上に登ります。その先は急な登りが続きます。



相場振山の山頂 C
登りつめると、看板に相場振山と書かれたピークに。標高はほぼ530mです。その先の下りはこのように笹の切り分けを進みます。



錐山の姿 D
一旦40mほど下って、鞍部から登りなおし、標高510mほどの峰に近づきました。そこから、大崩壊地を抱く錐(きり)山の姿が望めました。右後方は霧ヶ岳。



相場振山の姿 D
そして振り返ると、さっき越えてきた相場振山の姿です。この名の山はあちこちに点在していますが、
かつて電話がない頃、相場師たちが情報をいち早く知らせるために旗振通信を行った場所と考えられます。




やせ尾根 D
やせ尾根の先がほぼDの510m峰の山頂部のようです。



モチツツジ D-E間
ちょうどこの日はモチツツジが満開でした。



急降下して大峠へ E
その後、Dの峰を60mほど急降下します。ズルズルと滑りだすほどの勾配でした。下りきったところに「大峠451m」との表示がありました。
名前が峠なので、山女原へのルートもあるかもしれませんが、ちょっと見たところ、いい踏み跡は見つかりませんでした。




近づく大崩壊地 F
峠の先のFあたりから。錐山の大崩壊地が近づいてきました。



新名神 F
ここから北東を見ると、鈴鹿トンネルから出たところの新名神です。



大崩壊地の縁を行く F-G間
いよいよ大崩壊地に達しました。縦走路は、この岩の上を行きます。西内氏もガイド本で「細心の注意を」と書かれていた箇所です。慎重に岩の上へ。



大崩壊地から F-G間
足もとは心もとないですが、当然景色はGoodです。右遠方に臼杵ヶ岳。その手前が相場振山。左がDの510m峰。



尾根上の道へ G
ようやく危険なところを過ぎて、落ち着いた尾根に戻りました。もう錐山の山頂はすぐ先です。



ベニドウダン G-H間
山頂近くは、ツツジ科の樹がたくさんありました。ベニドウダンがちょうど真っ赤な花をつけていました。



錐山の山頂 H
やがて錐山の山頂に着きます。ここは、眺望がかなり素晴らしい山頂です。ここで昼食としました。





錐山・山頂及びその周辺からの眺望


ベンケイ
ほぼ真北にあるベンケイ762mです。



能登ヶ峰、綿向山
その左には能登ヶ峰760m。右後方には綿向山1110mがはるかに霞んでします。



四方草山
南西方向にはあとで通る予定の四方草山667m。



霧ヶ岳
ほぼ真南には次に向かう霧ヶ岳640m。



明星ヶ岳
南東には明星ヶ岳565m。






霧ヶ岳の登り H-I間
錐山からの下りは笹の深い切り開きを漕いで進みました。途中、足音で大きな動物が逃げていきましたが、鹿では無いようでした。猪かな?
鞍部を過ぎてからの霧ヶ岳への登りは、このようになかなか快適な尾根でした。特に標高が上がってくると、ツツジ類が増えてきました。




錐山を見下ろす H-I間
山頂手前の三叉路の直下から。さっきお昼を食べた錐山が、早くも眼下に来ています。


霧ヶ岳の山頂 I
三叉路からはほんの少しで霧ヶ岳の山頂です。看板は630mとなっていますが、地形図より標高はほぼ640m。眺望はありません。



四方草山との鞍部近くからの霧ヶ岳 J
霧ヶ岳から一気に下って、四方草山との鞍部へ。その先少し登ったJあたりから見た霧ヶ岳の姿です。



尾根の左の山腹道 K
その先の稜線で、忠実に尾根上をたどろうとすると踏み跡の薄い急登となるところで、左の山腹道に進みます。赤いテープもこちらに来ています。



四方草山(北峰)の山頂 L
やがて、山腹道が尾根に近づいたところで右の尾根に出て、笹のトンネルをしばしくぐると、四方草山の山頂広場に飛び出します。
標高667mの三等三角点が鎮座するこの山頂は、ほぼ10年ぶりに来ました。10年前と印象がずいぶん違います。




四方草山・南峰からの羽黒山 M
北峰からは明星ヶ岳ぐらいしか見えませんが、少し先の南峰からは10年前と比べてずいぶんと景色がよくなっていました。亀山方面には奇岩の羽黒山。



南峰のベニドウダン M
ここにもベニドウダンがきれいに咲いていました。



南峰を下る M-N間
四方草山の南峰から三子山を目指します。最初はこのようなきれいな尾根ですが、この先には荒々しいキレットが待っています。



キレットを避けて山腹へ M-N間
その先で尾根を左手に急降下します。すると山腹を尾根とほぼ平行に通る踏み跡に出ます。



この尾根を登る N
今の道(右下から来る道)はやがて尾根道と合流します。あまりにいい尾根道なので、ついついこれを下ってしまいそうになりますが、
この尾根はNから南東方向へ、坂下方面に下る尾根です。ここは左上へ登って再び四方草と三子を結ぶ尾根へ。




キレットを振り返る N-O間
ここは10年前と同じような感じです。



高畑山と三子山 N-O間
キレットあたりから。下には今から越えていく三子山が3つ並んでいます。遠方には鈴鹿峠を挟んで、高畑山。その左手には那須ヶ原山なども確認できます。



シライトソウ O
四方草山からの下りで、見知らぬ花を見かけました。シライトソウです。群生地は2箇所ほどしかありませんでした。大事にしたい花です。



三子山(北峰)の山頂にて P
ここも、10年ほど前に二回来ていますが、全く印象が変わりました。その頃は藪が多く、ヒノキの隙間から綿向山を眺めたものでした。
いまはヒノキは大きく育ち、綿向方面は見えませんが、山頂は広場状に藪が刈られて、くつろげる場所になっていました。



東海自然歩道 Q
三子山を三つとも越えてQまで来ました。ここで、縦走路は東海自然歩道に出合います。
まっすぐ進めば鈴鹿峠ですが、今日は右の山女原へとこの道で戻ります。




階段の道 Q
さすがは東海自然歩道。よく整備が行き届いています。



時計も三子山 Q-R間
ふと腕時計の標高履歴表示を見ると、みごとに三子山の形をしていました。



尾根を下る Q-R間
東海自然歩道は、北向きの尾根を一気に下ります。



道標も苔むして R
やがて、尾根の突端まで下ると、谷沿いの林道に出ます。



お茶畑 R-S間
このあたりは土山茶の産地です。



山女原が近づく S
やがて、車を置いた山女原の集落が見えてきました。



山行記録:日時−2012年6月3日、天候−小雨のち曇り。9:37 山女原の空地Pに駐車後出発、9:38 @、10:13 安楽峠B、10:22 相場振山・山頂C、10:58 大峠E、11:10 錐山の大崩壊地F、11:33 錐山・山頂H着、昼食。11:51 山頂発、12:09 霧ヶ岳・山頂I、12:33-39 四方草山(北峰)山頂L、12:46-53 四方草山(南峰)山頂M、13:19 三子山との鞍部、13:34 三子山・北峰山頂P、13:47 三子山・中峰山頂、13:58 三子山・南峰山頂、14:09 東海自然歩道出合Q、14:22 林道出合R、14:59 駐車地P着。

 梅雨入り間近の曇りがちな日、雨は朝のうちであがるという予報を頼りに、少しのんびり目にやってきました。小さい雨粒の小雨が残る中を、安楽峠目指して登って行きました。この峠は、名前の通り、半時間あまりでけっこう楽に峠Bまでつきました。今日歩くこの鈴鹿県境主稜線は、他のそれに比べて、ずいぶん地味な山塊です。しかし、かといって楽なルートではなく、安楽峠Bから東海自然歩道出合Qまで、少なくとも9つの峰を越えなくてはならず、しかも錐山の大崩壊地や、四方草山のキレットといった、ちょっと難儀な場所もあり、なかなかハードな縦走となります。
 今回は、北から南へのルートとしました。それは、僕自身、四方草山から北は未踏の山域だから、途中で戻るにしても霧ヶ岳ぐらいまでは踏んでおきたいという、個人的な理由です。西内氏は類似のルートを逆回りでガイドに載せておられます。まあ、どちらがいいのかは両方行ってみないとわかりませんが・・・
 安楽峠Bからいきなりの急な登りで、すぐに相場振山の山頂Cに着きます。ここからは登り下りの繰り返しで、510m峰Dへ。途中、二箇所ほど惑わせられる分岐もありました。その都度地図とコンパスで確認した方がよいでしょう。DからEへの下りは、滑りだすぐらいの急勾配。やっと60m下ると、そこは大峠という、鈴鹿には何個所もありがちな名前の札が架かっていました。ここに、「山女原分岐」と書かれていましたので、下るルートもあるにはあるようです。さて、ここから先は崩壊地。一番の難所は上の写真にも示しました、岩の乗り越えです。くれぐれも左へ落下しないように注意が必要です。上の松の木がザックに引っ掛かって動きにくい場所でした。でも、ほんのしばらくで危険箇所からは脱却できました。ここを過ぎればツツジ類の樹がたくさんある錐山Hも間近です。いつの間にか小雨はやみ、薄日が差してきていました。錐山の山頂Hで昼食タイム。なかなか雰囲気のいい山頂でした。長い休憩にはここを逃す手はないでしょう。
 ここから霧ヶ岳は、思った以上に近かった印象です。今回は18分、特に何も問題のない歩きやすいルートでした。縦走路から少しだけ東に外れているので、通りすぎないように。といっても、立派な道標があったので、問題ないでしょう。霧ヶ岳Iから四方草山も、一つ峰をワープして進めば、25分ほどで到着します。ただ、北峰付近からの眺望を楽しみたい場合には、ワープしないで行くか、尾根に出てから少し戻ることが必要なようです。
 四方草山以南は10年前(2002年)にも来ているので、詳しくはそちらをご覧ください。ただ、全体的には藪が減って、10年前より歩きやすくなった気がしました。さて、Qから先の東海自然歩道も、この日初めて歩く区間でしたが、言うまでもなく整備十分で、なんの問題もなく歩くことができました。ただ、そこそこの距離があるので、QからPまで、50分ほど費やしました。
 このルートの全距離は13km程度です。今回は休憩も入れて5時間20分あまりで周回してきましたが、上でも書いたように、滋賀県側にはほぼエスケープルートがないので、秋の日が短い時期などは、朝をこころもち早くするなど、注意が必要かもしれません。

MAP


この地図は国土地理院発行の2万5千分の1地形図(鈴鹿峠)をベースに作成いたしました。

図中の番号は上の写真と対応しています。